TalkingRoom vol.3 変化を与える二人

vol.3 変化を与える2人

異なる立場の二人が出会い、化学反応を起こすトーキングルーム。
第三回目となる今回は、【変化を与える二人】がテーマです。

 

《お二人のご職業について教えてください。》

小野みのり(以下、小野) 【株式会社林屋】という呉服屋で、オンラインショップスタッフとして働いています。
学校卒業後、過去には古着屋、コンタクト販売店でもオンラインショップに携わる形で働いてきたんですが、着物にハマったタイミングで今の職場と出会いました。元々オンラインショップの仕事が好きでしたが、興味のある着物の仕事に携われたことで、今では着物の楽しさを広めていくことが私自身の目標となっています。

狩山莉絵子(以下、狩山) 私は倉敷で【ものづくり体験型ワークショップDEVING】の代表をしています。
ただ物を作って教えるという場所はいろいろあると思いますが、よくあるものや面白みのないものでは誰にも注目してもらえない時代だと思うんです。それで岡山初と言える何かがやりたくて、いろいろなものづくりを一つの場所で体験できる、ワークショップ専門店を作りました。
場所柄、観光で来られた方にもよく寄っていただいてまして、思い出作りとしてものづくりを楽しんで帰られる方も多いですし、記念日の贈り物を作りに来られる方もいらっしゃいます。

 

《小野さんはオンラインショップのお仕事をしたくて今のお店を選ばれたんですか?》

小野 それもありますけど、ある時に雑誌で提案されていた着物の着方を見て、衝撃を受けたんです。
着物には古風な印象があったんですが、そこにはとてもカジュアルな着物の楽しみ方をしている方がたくさんいました。下駄や草履ではなくパンプス等を合わせている方々が載っていて、同じ着物でも現代的なファッションとしての楽しみ方もあるんだ、とビックリしました。それで着物への印象が変わり、興味が湧いてきたタイミングで、今の職場と出会ったことがキッカケになります。
元々自分自もオンランショップをよく利用していたので、そこに関わる仕事がしたいと思い仕事を選んできましたが、今は着物を楽しむといったことを広めていく、その一端を担えるといった意味で、この仕事を楽しめています。

小野みのりさん

 

狩山 今日はカッチリと着物を着られていますが、今もパンプスと着物を合わせたりはされているんですか?

小野 今は大正ロマンが好きなので、それをイメージさせる着方が好きです。
カジュアルな着方からこの世界を好きになりましたが、好きになればなるほど正統派の着方や昔ながらの着物の柄、歴史や意味にも興味が出てきて。興味の幅が広がりました。着物を着るという行為自体、特別な日のために在るイメージでしたが、今は休みの日でもとりあえず着物を着て、着たからにはどこか出掛けよう、と決める感じです。

狩山 なるほど!特別な出来事のために着るだけではなく、着物の楽しみ方もたくさんあるんですね。
でも、着物って自分で着付けをできる人が少ないんじゃないですか?

小野 そうですね、多くはないと思います。でも私、人に着物を着せるのも好きなんですよ。誰かと出掛ける時も、自分だけ着物を着ている状況はちょっと寂しいんです。だから友達と遊ぶ時には私が着物を用意して着付けもして、美観地区や後楽園に一緒に出掛けています。
観光地なので、よく写真も撮られますが、実は私写真を撮られることがちょっと苦手で……私を被写体にして撮ってもらえる時は狐の仮面をつけて撮影してもらってます(笑)

 

《狩山さんはどういったキッカケで体験型ワークショップを始めることになったんですか?》

狩山 昔から起業したいという想いをずっと持っていました。ただ、特にそれに向けて何かをしてきたというわけでもなく、社会に出てしばらくは営業職をしていたんです。そこで無理をしすぎて体を壊してしまったんですが、その時に今が自分の夢を叶えるタイミングだな、と思いました。
そこから具体的に何をしていこうと考えた時に、自分にできる事や得意な事、客観的な目での『私のイメージ』は何だろう、と自分自身を因数分解して考えてみたんです。それで出た答えが今の、ワークショップ専門店という形になっています。
前職ではIT関係の職場に勤めていたので、周囲の人にはとても驚かれました。けれど私の中では全く同じなんです、ITも、ものづくりも。構成を考えて全体像を考えて細部を考えて、という流れは本当にまったく同じで。そういったことを自分でやっていく、ものづくりというシーンに関わるのが好きなんです。その自分の好きなものを活かしつつ、今の時代に合っていて、かつ面白い場所をという想いから【DEVING】は作られました。

狩山莉絵子さん

 

小野 具体的にはお店ではどんな物が作れるんですか?

狩山 いろいろ作れますよ!ブレスレットや名刺入れ等のレザー小物がメインメニューにはなっていますが、シルクスクリーンやサシェ、和物で言えば堆朱(ついしゅ)と呼ばれる工芸品のお箸も作っていただけます。今現在は15種類程のメニュー数で、次々に新しいものを追加しています。

小野 そんなにたくさん!その全てを狩山さんご自身が学んで来られたんですか?

狩山 そうです!元々私自身がものづくりが好きなこともあるんですが、ものづくりは専門店じゃないと出来ない、という考え方や概念を壊したかったんです。きっと今はもうそんな時代でもないし、もっとラフにものづくりを楽しんで欲しい。
【DEVING】ではとにかくものづくりを気軽に楽しんでもらえるようにしているので、ここでものづくりの楽しさを知ってもらって、もっと詳しく知りたい、上手に作れるようになりたい!と思ってもらえたら、専門店や専用の教室で掘り下げてもらえると一番いいな、と考えています。

ものづくりについて

 

《着物とものづくり、どちらも今現在は当たり前に日常に根付いているわけではない物だと感じます。それを広めていく難しさ・楽しさはありますか?》

狩山 私は既に広く浸透している物を追いかける事にはあまり楽しさは見出せなくて、既存のものさしで「すごいね」と言われる事より、まだレールも引かれていないような新しい物を見つけ出して自分で基準となるものさしを作っていく事に楽しさを感じます。
今後私がしている事を追いかける誰かが出てきた時に、その方たちは私が決めたものさしを基準にするわけですよね。自分が決めたものさしが基準になり、広がっていく。それはすごく嬉しいですし、楽しいことだと感じます。
逆に、小野さんのように歴史ある着物という文化を今あらためて広めていくという事はとても難しそうだな、と感じます。

小野 そうですね。昔ながらの伝統的だったり正統派の着物の着方は、やはり敷居が高く感じられるものだと思うので、そこだけを見てしまうと広めていくのは難しいな、と私も感じています。
ただ、私自身がそうだったように、現代に合った着方であったり、ファッションとして着物を楽しみたいというのは、どちらかというとものさしを自分で決めるというよりも既存のものに乗っかっているというイメージなんです。歴史がありながらも、まだまだ開拓の余地があるジャンルだとは思うので、既にしっかりとしたレールはありますが、形を変えて枝分かれしながら広がっていくのかな、と考えています。

着物文化について

 

狩山 海外の方にも着物ブームが広がっていますが、そちらに向けての情報発信等も考えられているんですか?

小野 今まで私が話してきたのはあくまでファッションとしての着物の立ち位置でしたが、着物は着るシーンや着物の選び方にもそれぞれきちんとした意味があるんですね。今はあまり見かけませんが、夫に先立たれた妻は白喪服という白無垢を仕立て直したものを身にまとい、今後他に夫を取るつもりはない、という意思表示をしていたんです。そういった文化や歴史を知ることや広めていくことは楽しいですが、同時に着物を着るという行為自体が重く考えられてしまう原因にもなっていますよね。
ただ、私は入口は本当にどんなことでもいいと思うんです。まずは興味を持ってもらってから、文化や歴史を深く学んでもらったり、今だからこその文化と絡めていったりしながら、国内にも海外にも、もっと軽い気持ちで広まっていって欲しいと考えています。

狩山 まずはラフに、カジュアルに飛び込んできてもらって、そこからですよね。知ってもらって体験してもらって、いろんな変化を見せながら広まっていくのが今に合った形だと思います。

 

《今後の展開や夢はありますか?》

狩山 私は今、結婚したてなので、今後子どもができるかもしれないと考えた時に、今はまだ次の新しい展開や夢は考えたくないな、と思っています。
子どもが生まれたら、どうしても今考られる通りには動けなくなるでしょうし、できることも現実的にはやっぱり限られてきますよね。その時、子どもを言い訳にはしたくないんです。
私が今持っているもの・できることの中で、しばらくは動いていきたいと思います。いつか子どもが生まれたら、私自身の考え方や見え方も変わると思うので、そこで次の展開を考えていきたいです。

小野 私の方は気軽に参加できる着物イベントや、着物に触れる機会自体を増やしていくことが当面の目標です。岡山には着物が似合う町並みがとても多く残っていますし、その町並みを活かしたイベントを計画しています。
写真を撮っていただける機会も増えてきているので、そういう方々と一緒に何かしていけるとできる事も広がるのかな、と考えています。私自身本当にカジュアルな形で着物文化に飛び込みましたが、着物を知るうちにその背景にある文化や歴史まで好きになっていったので、同じように着物を好きになっていただける機会を増やしていきたいと思います。

 

【mug 2017年7月発行号掲載】

 

株式会社林屋 オンラインショップスタッフ
小野みのり

小野みのりさん

既存の着方に囚われない、現代的な着こなし方を楽しむ着物ファッションから、着物文化に興味を持つ。現在はオンラインショップスタッフとして働く一方、休日もさまざまな着物の楽しみ方にチャレンジしている。


ものづくり体験型ワークショップDEVING代表
狩山莉絵子

狩山莉絵子さん

観光客で賑わう倉敷に誕生した、常設型ワークショップDEVINGの代表。観光の思い出としてのものづくりから、日常を彩るためのものづくりまで、広く対応。イベント出店や講演など、幅広く活躍している。

ものづくり体験型ワークショップDEVING

               
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